メガバンクから投資銀行への裏ルート 第3話 ~スキルよりもスタンス~

「今日だけでいい。今夜は、名古屋モードへのスイッチをONにするんだ。」

クラブに並んだ美女を横目にしながらも、豪(ゴウ)は三崎(ミサキ)から言われたこの言葉を頭に浮かべていた。

「俺に、名古屋大好き芸人にでもなれって言うのか?しかし、ここにいる美女達が抱けるなら・・・」

一次会の合コンから飲み続けたビールで理性も弱まってきた。

「ダメだ。いったい俺は、なんて卑猥なことを考えているんだ・・・」

その時、親父から言われた、あの言葉を思い出した。

目次

メガバンクから投資銀行への裏ルート 第3話 ~スキルよりもスタンス~

「いいか、豪(ゴウ)。法人営業というのはな、スキルよりもスタンスなんだ。」

「若い連中は、なにかとカッコいい資料やプレゼンに憧れがちだが、顧客に響くのは、もっと泥臭い部分、顧客のことを愛し、顧客の役に立とうとするスタンスなんだよ。」

どんなに立派な建物でも、土台がしっかりとしていなければ、容易に崩れてしまう。
見栄えのいいタワーマンション、あれだけの容積率と高さを支える基盤は、さぞかし盤石なものなのだろう。

女性で言えば、ファンデーション。
しっかりとした下地がなければ、どれだけ高価な化粧品を使用しても、放たれる輝きは異なる。

それでは、営業でいうスタンスとは?

顧客のことを愛し、顧客の役に立とうとするスタンス・・・

名古屋モード、スタート

「おい、豪(ゴウ)。なにボーっとしてんだ。まだ酔うには早いぞ。今夜はここからが本番だ。」

こなれた三崎(ミサキ)は、クラブ中を見渡し、今夜にふさわしい美女に目をつけていた。

「その2人組。でら可愛いな。話しかけに行こう。」

いつしか東京生まれの三崎(ミサキ)も、「でら」とか名古屋弁を使ってやがる。

三崎(ミサキ)が目を付けた女性、東京では到底相手にしてもらえないであろう、モデルクラスの別嬪だ。

返す間もなく、女性陣に声をかける三崎(ミサキ)。

三崎
「君たち、飲み足りてる?金曜だし、乾杯しようよ。」

女性陣
「おごってくれるの?」

三崎
「もちろん。なぜなら、今日は融資担当がいる。誰もが知ってる○色の銀行に勤める彼がそうさ。」

女性陣
「え!?〇〇銀行!?すごーい!!乾杯しよーーー♡」


「おいおい、勝手に俺の会社の名前出すなよ。しょうがないなー。そんなに飲みたいなら、俺が融資してやるよ。」

女性陣
「イケメンーーー!!!♡」

なんてノリの良いやつらなんだ。

東京でこのルックスの女性なら、確実に遊び慣れている。
おごられ慣れているだろうし、おごってもすぐに逃げてしまうのがオチだ。

しかし、この子たちは、本気で喜んでいるようにも見える。
これが名古屋なのか?

最初の乾杯がシャンパン?

「何が飲みたい?」

いつになく紳士的な対応をする三崎(ミサキ)。

女性陣
「シャンパンとか飲みたーい!でも、やっぱりカルーアミルクで良いかな。」

三崎
「シャンパンが飲みたいのかい?遠慮することはないよ。だって、今日は、融資担当がいるんだから。」

女性陣
「そうだった!やばーい!!!♡シャンパン飲みたーい♡」


「おい、三崎!うちの銀行を良いように利用してるけど、そんな高い酒なら俺は払わないぞ!」

女性陣
「えーー!!銀行なのに、ケチ―!!」

三崎
「もしかしたらと思って、実は、あっちに席を確保しておいたんだ。そこでシャンパンをボトルで頼んでおいたから、そこで飲もうよ。」

女性陣
「イケメンすぎるー!!やばーい!!紳士!」

三崎
「俺は名古屋が大好きで、この街で楽しい仲間を作りたいと思ってる。君たちと、そんな関係になれたら嬉しいなと思ってるし、このくらいで喜んでくれるなら、いくらでもしてあげるよ。」

法人営業は、スキルよりもスタンス。
顧客のことを愛し、顧客の役に立とうとする姿勢・・・

それでは、クラブで女性を口説くスタンスとは?
名古屋を愛し、名古屋の女性に役立とうとするスタンス・・・

三崎(ミサキ)、まさか・・・。
アルコールで鈍った頭をフル回転させ、豪(ゴウ)は席へと歩きながら考えた。

名古屋モードへのアクセル、ON、ON、ON

「カンパーイ!!」

シャンパンを飲み干し、ダンスフロアで踊る男女を見ると、あることに気がついた。

鷲尾(ワシオ)がいる・・・

あいつは、東大卒のエリート。
トヨタを筆頭とした大手担当の名門支店に配属された生粋の頭取候補だ。
行内ではいつも成績優秀、高身長でイケメン、一見真面目に見える彼が、こんなところで遊んでいるとは・・・

しかも、隣にいる女性は、クラブに入る時、俺が可愛いと思ったあの子じゃないか。

あの女、鷲尾(ワシオ)にベタベタくっついていて、もうゾッコンだな・・・
くそ、俺も鷲尾(ワシオ)に負けている場合じゃない。

三崎
「そうだ、僕たち自己紹介がまだだったね。俺は三崎。トヨタに勤めてる。出身は東京なんだけど、トヨタは本社がこっちだから、一生名古屋に住むことになりそうだよ。彼は、最近、名古屋に引っ越してきた豪だ。大学の同期だよ。」


「どうも、豪です。名古屋に来たばかりだけど、味仙とかひつまぶし、矢場とんとか、料理も好きだし、ずっとこっちに住んでも良いかなってくらい、名古屋の生活が好きになってきてます。名古屋で仲間を作りたいと思ってるし、2人とも仲良くなれたら良いな!」

豪(ゴウ)の強みは、並外れた対応力とコミュニケーション能力。
鷲尾(ワシオ)、三崎(ミサキ)に負けじと、名古屋モードへのアクセルを全開にしていった。

女性陣
「えー!もう味仙行ったんですね!現地の人がよく知っているお店に行ってるなんて、もう私よりも名古屋通じゃないですかー!東京の人って名古屋を見下してる人が多いけど、名古屋好きな豪君となら仲良くなれそう!しかも銀行とかエリートで素敵♡」


「そう思ってくれたなら良かったよ。あ、確か君は、シャンパンが好きって言ってたよね?もうないみたいだし、新しいの頼もうか?」

女性陣
「豪さん、気遣いできすぎて、素敵ー!お言葉に甘えて、もう少し飲みたいです♡豪さん、三崎さんと同じ大学って言ってましたけど、どちらの大学だったんですか?」


「ああ、大学は慶應だよ。」

女性陣
「慶應!?チョーすごいんですけど!そんな人と出会えて、私、幸せです!」

東京ではなかった反応。

慶應、メガバンク。

東京ではメガバンク以上に稼ぐハイキャリアな男性も多く、これほど喜んでもらえることはない。

しかも、名古屋を愛し、名古屋の女性の役に立とうとするスタンスで対応しただけで、相手は俺になびいているようにも見える。

いや、待てよ。これが、親父や三崎の言っていたスタンスによる変化なのか?

よし、今夜は、名古屋モードへのアクセルをさらに加速していこう。

そして、展開はいっそうイージーになっていく。

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「メガバンクから投資銀行への裏ルート 第3話 ~スキルよりもスタンス~」への3件のフィードバック

  1. 細かい描写は真実味ありますが、真実なのでしょうか。
    名古屋の女の子に一番人気は「医師」です。投資銀行とか得体の知れない産業の人なんかに近づかないです。東海高校筆頭に極めて医学科進学率が高い地域です。慶応でも医学科なら違うでしょうが。

    1. 慶応カレンダー編集部

      コメントありがとうございます。ご指摘のとおり、一番人気は医師のようです。

      クラブで帰ろうとしていた女性に「医師」と伝えただけで帰るのを辞め席に戻るインパクトがあったとお話がありました。

      名古屋に豪(仮名)がいた際、肩書は投資銀行ではなくメガバンクでしたが、たとえ話で投資銀行の話をしても、ゴールドマンやJPモルガンなどの企業名はそもそも知られていないというのが大多数だったようです。

      こちらは本人バレを防ぐため、フィクションを交えて記事作成しております。
      女性のウケという視点では、イケメンであること、企業ブランドではトヨタが好かれていたようで、それを超えるブランドは医師、とのことでした。

      1. GSの人と同席したことありますが、女の子は「AV」と勘違いしてました。サックスを聞き間違えたのでしょうか。

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